よし、今から集中するぞ、
とパソコンを開くも、3分後には見るつもりもなかった記事をついついクリック。
「いかんいかん、集中集中」と深呼吸。
今度は、スマホの通知がブルブルと鳴りました。
そのついでにまた別のお知らせを見に……。
まったく進まない。
今の時代、選択肢が多過ぎますね。
ニュース記事、SNS、電子BOOK、おすすめ動画がいくらでも出てくるし、ドラマ、映画もスマホで観れる。
ラジオ、ポッドキャストなどの音声コンテンツ、魅力的な誘惑だらけです。
楽に刺激を与えてくれる方についつい流れてしまうわたしの脳。
あれもこれもそれも同時進行でやってしまう傾向もあります。
誘惑に負けない集中力を身に着けたい!
なんかいい方法はないものか、と考えていたら昔のある場面を思い出しました。
スマホなどないずいぶん前の話ですが、わたしは1人で長時間フェリーに乗っていました。
海を眺めることにも飽きたら、やることがなくなってしまいました。
まだまだ先は長い……。
退屈をしのぐため、休憩室(パブリックコーナー)へ。
たたみ部屋に座椅子が置いてあって、
退屈そうな大人たちがすでに15名ほど座っていました。
この部屋は昼寝もできない大人たちが集まった部屋のようです。
テレビには見たこともない安っぽい海外アニメが流れていました。
チャンネルは自由に替えられないようです。
みんなテレビの方を静かに向いていました。
昭和一桁生まれのおじさんですらも、仏頂面でテレビの画面を見ていました。
とにかく他にやることがないので仕方ないのです。
永遠に続きそうな退屈をしのげれば、幼児向けのアニメであろうとなんだってよかったんでしょう。
アニメは非常に分かりやすいベタな展開で進んでいきました。
みんな無表情です。ここが海の上じゃなかったら、こんな番組とっくに変えられているはずです。
気の毒な15人の大人たちは、ただただ顔をテレビに向けているだけで、脳は寝てるのかもしれません。
テレビを見ながらいつのまにかアニメの世界に入り込んでいたわたしは、ついクスっと笑ってしまいました。
「しまった、はずかしい……」
と思った瞬間、部屋中が一斉に笑い声に包まれました。
昭和一桁のおじさんですら、ふだん見るはずがないアニメの世界に入り込んでいたのです。
この場面は衝撃でした。
人は、選択肢がひとつしかないと、しかたなくであってもそれに集中し、しばらく我慢すればその世界に入り込むことができる、ってことを知った瞬間でした。
ということは。
それしかやれない環境をつくってしまえば、人はそれをやることができるってことです。
よし、なるほど!と思って、すべての選択肢を消して、なかなか手につかないことをやってみましたが、いやはや……寝ていました。
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