スコちゃん、モモくん、しゃびちゃんが撮った写真を写真部長がながめています。
なんか言いたいことがありそうです。

構図ってなにー?

写真がきれいに見えるように、主題や副題を配置する場所を決めることだよ。
三分割構図や対角線構図、二分割構図、S字構図などいろいろな構図があるんだ。日の丸構図は初心者にありがちな撮り方のためあまり使わない方がいいとされているんだよ。

へー、ただ撮りたいように撮ったらダメなのか。

写真がうまくなりたいなら、それじゃダメさ

そうなのですね。写真のことをもっと知りたくなってきました

でしょ? そろそろそんな思いもふくらむ頃だろうと思い、今日は、プロの写真家さんをゲスト講師としてお招きしてるんだよ。構図とか写真の撮り方を教えてもらうといいね。もうすぐ到着されるころだと……
コンコンとノックの音です。
よくできた物語のようなタイミングでプロの写真家さんがやってきました。

わた先生、遠路はるばるありがとうございます。どうぞこちらへ。今日はよろしくお願いいたします
「わた わたおと言います。写真を撮ってるねこちゃんがいるとのことで、会ってみたくてやってきました」

わたわたてんてー、写真が上手になりたいので写真を教えてください

わたしたち写真のことを何も知りません。構図という言葉も先ほど知ったばかりでして……

(わたわたてんてーって、羊さんなのかな……?)

(コラ!モモくん静かに!聞こえちゃうよ)

「そうですか。写真がうまくなりたいですか。ひとつお尋ねします。写真を撮ることは今、楽しいですか?」

たのしい!
おもちゃで遊ぶのと同じくらい楽しい!
「いいですね、迷いのない返事ですね。
写真を撮るという行為は、大きく2つに分けられます。
ひとつ目は、『誰かに頼まれて撮る写真』。広告用の写真とかプロが撮るウエディングの写真とか。ホームページに載せるための写真もこちらの種類に入ります。商業カメラマンはこっちになります。
そしてもうひとつは、『誰にも頼まれていないのに撮る写真』。趣味だったり、自分で作品を作ったり、自分や家族や友人同士の思い出用に残したり。みなさんはどっちの写真を撮ってるのですか?」

後者の方になるかと思われます
「じゃあ、『構図』ということを考えるのもよし、考えなくともよし。どっちでもお好きな方でいいんじゃないかな。まあ、個人的には構図はあまり意識しない方がおもしろいと思っています」

え!?それじゃ写真がうまくならないんじゃ……
「そもそも写真はうまくなる必要はありません」

えーー!?

なんと!

ヘタのままでいいの?

せ、先生、今、なんとおっしゃいました!?
「構図に、正しいもダメもありません。見せたいものを、自分が『心地いい』という場所に配置すればいいのです。それがど真ん中でも端っこでも大丈夫です。日の丸構図はダメという人もいますが、なにも悪いことはないとわたしは思っています」

で、でも作品を作ったり、コンテストで賞を取りたいのであれば構図は大事でしょう?
「構図ばかり考えて撮られた写真は見ているとつまらないですね。審査員をやっていると、みんな同じような写真が多いのです。構図は、自分が心地いい場所に配置したらそれがたままた3分割構図になっていた、ってくらいで十分です。
作品つくりたいなら、なおのことです。今までの正解とされてきたものを壊すくらいの気持ちがないと、新しいものや、感動するものは生まれませんよ」
「今、写真を撮るのが楽しいって言ってましたね。写真を学んでいくとしだいに構図なども知識も増えていきます。もちろん、構図ありきで写真を撮るのも構わないと思います。おれは構図を極めるぞ、っていうのもいいでしょう。正解はないのですから。
ただ、この構図は「ダメ」とか「正しい」とか、「こう撮るべきだ」みたいに、『正解がある』という考え方を持ち込んでしまうと、写真を撮っていくうえで致命的な弊害が出ます。それは何だと思いますか?」

写真を撮っていくうえで……

致命的な弊害……

致命的な弊害ってどういう意味?

とんでもなくでっかいイヤはことが起きるってことだよ。
先生、なんですか、その答えは……。
「それは、【写真を撮ることが楽しくなくなってしまう】ってことです。最初は楽しかったのに、いろいろ知ってしまってせいでつまらなくなるって、こんなに残念なことはありません。
修学旅行で友達と部屋でふざけ合って撮ったピントの合ってないぶれた写真。あんな衝動で撮った原点のような写真をいつまでも撮れるってことがすごいことなんです。でもね、知識や経験が増えれば増えるほど、人から写真が上手だと思われたい、とどうしても思っちゃうんだよね~。だから原点のような写真を撮りつづけることは難しいんですよ」

上手な写真を目指さなくていいんですね
「そうです。何はともあれ、写真を撮ってる時間を楽しむことです。
趣味の魚釣りから帰ってきた人に向かって、『1日かけて1匹も釣れないなら、釣りに行かずに最初からスーパーで魚買えよ』なんて思わないでしょ? その人は釣りをするという体験を楽しんでるってわかってるから。
いい写真を撮るのが目的じゃなくて、写真を撮る体験を通していい時間を過ごすことが本当の目的なんじゃないかな」

そっか。いい時間を過ごすための手段としてカメラがあるのか

写真を撮ることがイヤになる前でよかったでございます

写真は撮りたいように撮っていいんだね

みんな写真がイヤになって、あやうく廃部になるところでした

渡 綿夫先生は持ってきたカメラを肩にかけて、部室のドアをあけ帰っていきました。
最後、みんなでお見送りです。
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